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米大統領選挙、ケリー人気の行方
持田直武 国際ニュース分析

2004年7月20日 持田直武

民主党ケリー候補の支持率は、日英仏独など米以外の主要7カ国で70%−90%と高い。一方、ブッシュ支持率は6%−20%。だが、米国ではブッシュがケリーをリード、または両者は互角。テロ戦争の指導者としては、ブッシュのほうがケリーより支持が多い。米大統領は否応なしに国際政治のリーダーシップを握る立場だが、問題は米有権者が国際世論に歩調を合わせて大統領を選ぶとは限らないことだ。


・米国世論と国際世論の断絶

 米の国際経済世論調査機関、グローバル・マーケット・インサイト(GMI)が6月14日、世界の主要8カ国(日米英仏独加中ロ)の有権者各1,000人を対象に実施した世論調査の結果を公表した。米大統領選挙の候補者、ブッシュ大統領とケリー上院議員のどちらを支持するかを聞いたものだ。その結果、米国内では、ブッシュ支持53.6%、ケリー支持46.4%で、ブッシュがリードしていた。しかし、米以外の7カ国では次のようにケリーが圧倒的な支持を集めた。

 独   ケリー支持 93.8% ブッシュ支持  6.2%
 仏   ケリー支持 93.1% ブッシュ支持  6.9%
 中国  ケリー支持 84.9% ブッシュ支持 15.1%
 ロシア ケリー支持 84.2% ブッシュ支持 15.8%
 日本  ケリー支持 83.7% ブッシュ支持 16.3%
 英国  ケリー支持 79・1% ブッシュ支持 20.9%
 カナダ ケリー支持 73.4% ブッシュ支持 26.6%
 (don't knowの回答は除外)

 質問はこのほか、1、ブッシュは国際政治の指導者として適当か。2、アルカイダとイラク攻撃が国際テロの抑制に役立ったか。3、アブ・グレイブ刑務所の虐待は異例の出来事と思うか。4、イラク攻撃は正しかったと思うか、などだった。そして、いずれの質問にたいしても、米以外の有権者の答えは、「ノー」が60%から90%に達した。イラク戦争に反発し、これを推進したブッシュ大統領に対して強い拒否反応を示していることがわかる。


・米国内の世論調査ではブッシュ、ケリーはほぼ互角

 だが、米国有権者の反応はかなり違う。ワシントン・ポスト紙が7月13日に発表した世論調査によれば、米有権者の55%は、ブッシュ大統領のテロ対策を支持。51%が、ブッシュはケリーよりテロ対策の面で信頼できる指導者だと答えた。ケリーのテロ対策を信頼するという答えは42%だった。また、大統領選挙ではブッシュ、ケリーのどちらを支持するかという質問では、両者とも46%で互角。6月の同紙の調査では、ケリー48%対ブッシュ44%だった。

 また、CNNとUSA Today紙が7月12日に発表した世論調査では、ケリーが50%の支持を集め、46%のブッシュをリードした。6月の調査では、ブッシュ48%、ケリー47%でわずかだがブッシュがリードしていた。このほかの米国内メディアによる世論調査でも、ブッシュとケリーがほぼ互角に競い合い、どちらも決定的なリードを奪えないという状況が続いている。ケリー候補は7月6日、エドワーズ上院議員を副大統領候補に選び、南部の保守的な有権者への浸透を狙ったが、今のところ支持率アップにつながった様子はない。

 今回の選挙は、テロ戦争、イラク情勢、経済の3つの成り行きが結果を左右するとみられている。浮動票がこれによって動くからだ。しかし、上記グローバル・マーケット・インサイトの調査が示すような、ケリー支持の加熱現象が米国内で起きるとは思えない。80年代以降、民主党はリベラル派、共和党は保守派を中心に組織を固め、支持率はほぼ50対50で固定化した。前回2000年選挙で、ブッシュ対ゴアが接線を演じたように、今回もこの枠の中での戦いとなる公算が強い。


・米の単独行動か、国際協調かが外交の争点

 ブッシュ大統領は7月12日、遊説先のテネシー州で演説、「フセインという敵を倒し、米国をより安全にした。戦争は正しかった」とイラク戦争を正当化した。そして、「9・11事件を2度と起こすようなことがあってはならない。そのために必要なら、今後も先制攻撃を辞さない」と強調した。イラクへの先制攻撃は9・11事件の再発を防ぐためにも必要だったという論理である。

 このブッシュ大統領の演説に対して、ケリー候補は声明を出し、「大統領は同盟国との協調をおろそかにしている」と批判した。同候補はこの声明で「米国が直面する最大の脅威は、テロリストや敵対国家が核兵器を持つことだ。これを阻止するには、同盟国と協力し、国際的な阻止の態勢を作る必要があるが、ブッシュ政権は何もしていない」と批判し、国際協調の必要性を力説した。

確かに9・11事件以後、米有権者の最大の関心は米国の安全確保である。それに応えるべく、ブッシュ大統領が出してきたのが、先制攻撃をはじめ、いわゆる単独行動主義の色合いの強い対テロ戦略である。一方、ケリー候補は民主党伝統の国際協調を打ち出した。国際世論がブッシュを拒否し、ケリーを圧倒的に支持するのは当然なのだ。問題は、米国の有権者がどう判断するかだが、ワシントン・ポストによれば、ブッシュ支持51%対ケリー支持42%である。米国の動きは当面国際世論と相容れないことになりそうである。


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