2009年6月28日 持田直武
イスラム革命体制の指導部が大統領選挙をめぐって分裂した。最高指導者ハメネイ師が保守強硬派アフマディネジャド大統領の再選を支持し、反対するムサビ元首相らの改革派を断罪。不満な改革派支持者は街頭デモで抗議、流血の事態となった。ホメイニ革命でイスラム体制を築いてから30年、同体制に初めて亀裂が入った。 ・イスラム体制を支える実力者たちの反目
大統領選挙は12日に行われ、内務省が翌13日開票結果を発表した。有権者は4,620万人、投票率86%。4人の候補者の得票率は次のようになった。 1位 アフマディネジャド(現職) 得票率62.6% 2位 ムサビ(元首相) 得票率33.8% 3位 レザイ(元革命防衛隊司令官)得票率 1.7% 4位 カルビ(元国会議長) 得票率 0.9% この結果、現職アフマディネジャド大統領が当選。内務省は7月26日から8月19日の間に大統領就任式を実施する準備に入った。これに対し、ムサビ元首相が13日声明を発表、「選挙に明らかな不正があった」として、再選挙を要求した。時を同じくして、ムサビ元首相の支持者2,000人余りが市内の広場や内務省前に集結し、タイヤを燃やして、警官隊と衝突。それ以来、ほぼ連日デモ隊が警官隊や革命防衛隊と対決、しばしば流血を招く事態となった。 ・英国のシンクタンクが調査した不正選挙の証拠
ムサビ元首相は再選挙を求める理由として、全国366選挙区のうち80箇所以上で投票数が有権者数を上回った点などを挙げた。選挙を管轄する護憲評議会も21日、調査した結果50選挙区で投票数が有権者数を上回ったと認めた。しかし、同評議会はその原因として、一部有権者が登録した選挙区以外の投票所で投票したためだと説明。これら50選挙区の投票300万票をすべて無効にしても、アフマディネジャド大統領の当選に影響はないとの理由で、再選挙の要求を退けた。 ・デモの背後で鍵を握る3人の指導者
ムサビ元首相はこうした「選挙の不正」を糾弾しているが、現在のイスラム革命体制を糾弾している訳ではない。これは他の改革派指導者にも共通している。イスラム革命体制は、イスラム法学者を中心とする専門家会議が国家の最高指導者を選出。この最高指導者が国政の決定権を持ち、大統領や議会、軍などを指揮する。79年のホメイニ革命で誕生した体制で、初代最高指導者ホメイニ師の下で、ムサビ氏は首相、ハメネイ氏は大統領として体制を支える中心的役割を果した。 掲載、引用の場合はこちらからご連絡下さい。 持田直武 国際ニュース分析・メインページへ |
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