アメリカ三面記事便り
自伝『A Journey』。出足は好調なようだ。

アメリカでは大人気のオーノ選手

「相変わらずの活躍ぶりで何よりだね」
「日系の移民として、ここまで来るのに色々苦労はあったのかな…?」
テレビからこんな言葉が聞こえてきたのでふと目をやると、そこには長髪のアジア系の青年がさわやかにインタビューに答えていた。今年のソルトレークシティの冬季五輪のショートトラック競技で、判定の末金メダルを獲得したアポロ・アントン・オーノ選手だ。

日本でメディアに接していた私には、判定で失格となった韓国選手団の猛烈な反発ぶりと、6月のワールドカップの韓国サッカー選手たちの抗議のパフォーマンスがまず浮かぶ。いかにもアメリカ人らしい両手を広げるパフォーマンスでゴールし、親アメリカの審判にアピールしたのではないか…。そんな疑いの目で見られていたせいか、彼が日本人の父親に育てられた日系人であることは、殆どクローズアップされなかったように思う。

アメリカでは、オーノ選手を厳しく育てた、ヘアサロンを経営しているシングルファーザーとの父子鷹ぶりは有名なようだ。水泳、インラインスケート、ショートトラックとオリンピックを目指して競技を変え、ヘアサロンの営業を終えた後、父が車の後ろにオーノ選手を寝かせて、競技場へと徹夜で運転して行ったのだという。オーノ選手は怪我にもめげずに競技では激しい情熱を見せ、普段の表情はとても爽やか。競技場で熱心に応援する父とともに、オリンピックアスリートの中でも抜群の人気だったらしい。

そして先月オーノ選手は、オリンピックで金銀両メダルを獲得するに至った自分と父の半生を自伝にして出版した。若干20歳で自伝を出すなんて早すぎるような気もするが、「努力の結果、富も名声も手に入れた人」として、インタビューアーの扱いも丁寧だった。男性司会者は「カッコいいね!」と絶賛し、女性司会者は「かわい〜!」と嬌声をあげ、MTVにも出演しブレークダンスを踊る。 日系人が人気者として扱われるのを見たのは初めてだったので、これで消えずにがんばってほしいなあと、私もちょっぴり嬉しくなってしまうのであった。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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