アメリカ三面記事便り
犯行に使われているらしいライフルは、インターネットで1500ドルほどで買える

ワシントン連続射殺魔の見えない恐怖

10月 2日午後6時04分 男性(55歳) 死亡
10月 3日午前7時41分 男性(39歳) 死亡
10月 3日午前8時12分 男性(54歳) 死亡
10月 3日午前8時37分 女性(34歳) 死亡
10月 3日午前9時58分 女性(25歳) 死亡
10月 3日午後9時15分 男性(72歳) 死亡
10月 4日午後2時30分 女性(43歳) 重傷
10月 7日午前8時09分 男性(13歳) 重体
10月 9日午後8時18分 男性(53歳) 死亡
10月11日午前9時30分 男性(53歳) 死亡
10月14日午後9時15分 女性(47歳) 死亡
10月19日午後8時na分 男性(37歳) 重体
10月22日午前5時na分 男性(35歳) 死亡

これはワシントン郊外メリーランド州やその近辺で起きている連続射殺事件の被害者の一覧だ。ガソリンスタンドや郵便局、駐車場にいた人が、消音機付きと思われるライフル銃で遠方から狙われる。目撃証言が乏しく、被害者の体内から銃弾が摘出されるまで同一犯かどうかがわからないという状況で、捜査は難航している。

連続して4人が射殺された3日木曜日は、ワシントン市内の学校にもオフィスにも帰宅勧告が出された。銃を保持する人物が拘束されたとの報もあったが、それをあざ笑うかのように事件は続いている。7日月曜日には、登校してきた男子中学生が学校前で狙撃された。 スクールバスで厳重にガードされて、家庭に送り返される子どもたちの映像を背景に、犯人はまだ野放しだと、レポーターがニュース番組で叫んでいる。

この事件が無気味なのは、犯人の狙撃の腕前が抜群にいいからだ。撃つのはたった一発で致命傷を負わせ、証拠を残さない。下町の人口密集地帯で、痴話げんかの果てにピストルを乱射したといった事件にはだいぶ馴れた気もするが、この犯人は見晴らしのきく屋外で、偶然通りがかった人に冷静に狙いを定める。 近辺の地理にも相当詳しい様子なので、「犯人は隣人の中にいる」と思われることが、地域の人たちの恐怖感をさらに煽っている。

「連続殺人犯としては珍しく、慎重で臆病な性格だ」
「軍隊に入りたくて、失敗したことを逆恨みしているのではないか」解説者のトーンは歯切れが悪い。
アフガン帰還兵の自殺や妻殺し事件が相次いだことは記憶に新しいが、周辺に軍事施設が多いこともあって、この事件にも軍関係者の関与がささやかれているようだ。犯人は警察の発表やマスコミの報道を逐一聞いているという。「大人がターゲットなので学校は大丈夫」と言われれば子供を狙い、「身体ばかり撃つのは射撃の腕が劣るから」と分析されれば頭を撃ってくる。

イラク派兵への支持率がじりじりと上昇している中でこの事件は起きた。第二の無差別テロなのか、戦闘開始に向けて募るフラストレーションの結果なのか。中学生が狙撃されてから、警察はコメント出すことを控えてしまったので、飛び交うのは憶測ばかり。見えない恐怖がますます高まっている。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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