アメリカ三面記事便り
松井秀喜 挑戦

ゴジラで狙うのは経済効果か

巨人の松井選手がニューヨーク・ヤンキースにやって来るかもしれないと、在NY日本人はウキウキしている。
アメリカ大リーグでの日本人選手の動向は、日本から送られてくる情報で知るのが主だった。でも、今回の松井の移籍の話題は、ちゃんとこちらでも報道されている。しかもスポーツ欄の一面でだ。

Godzilla is coming! Watch out, America! (ゴジラがやって来る。アメリカ、気をつけろ!)と、松井を「ゴジラ」の愛称で紹介。とにかく覚えてもらえない日本人の名前だが、ゴジラ(スペルは仰々しくGodzilla)というわかりやすい愛称があったのはとてもラッキーだった。なんせGodzillaはマンハッタンを縦横無尽に駆け回り、エンパイアステイトビルを破壊し、マジソンスクエアガーデンに巣を作った怪獣なのだ。 Nomo、Ichiro、Daimajin…。今までの日本人選手の名前は、アメリカ人には意味不明だった。わかりやすい愛称で得する点は大きいと思う。

「今ヤンキースに必要なのは、ピッチャーなんだけどな。バッターは高い給料取っている奴がごろごろいる」「日本人はこの前までいたけど、うまくワークしなかったな。名前は 忘れちゃったけど、太った奴さ」(注:伊良部のことか)
地元のヤンキースファンの反応は、まだこんなものだ。 巨額な移籍金が予測される中、本当に金額に見合った働きをしてくれるのか?とうがった見方をする報道もある。イチローや野茂は、あまりパッとしない状態のチームで、無名でのスタートだったので、かえって伸び伸びできた。ゴジラが鳴り物入りでヤンキースに来ても、ホームランを連発できるかどうかはわからないと。

今年のワールド・シリーズ出場を逃したにもかかわらず、ヤンキースは観戦チケットの値上げを既に発表している。この値上げも、他選手の放出も、全てゴジラ獲得のための資金作りなのだと言われてしまっては、入団交渉も始まっていないのに、かかるプレッシャーは相当なものだろう。

在NY日本人は、松井がイチローほど大リーグにはまるとは思えないと言いながらも、アメリカ人の中で「気配りの松井」がうまくやっていけるのかハラハラと気を揉んでいる。
「まずは通訳なしで会話できるようになってほしいよね」と、渡米した頃の自分の姿を重ねているかのようだ。

野茂がナ・ア両リーグでノーヒットノーランを達成したのは、我が事のように誇らしかったという人は多い。長谷川・大家・イチローのコミュニケーションのセンスは高く評価されている。佐々木・石井は今ひとつ。新庄はなにも覚える気が無いんじゃないか…。と話題は尽きることが無い。

実際、日本から野球選手が移籍すれば、取材の記者団や観戦ツアーの日本人が、どっと球場へと押し寄せることはよく知られている。テレビの放映権料は上がるし、日本企業がスポンサーにつくだろう。
日本以上に景気が悪いと言われ、ニューヨークもそこに暮らす日本人も厳しい状況にある。失業率は高止まりし、日本から旅行者は来ず、撤退する日本企業は続く。だからこそ、ゴジラへの期待はこんなに大きいのかもしれない。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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