アメリカ三面記事便り
マンハッタンのオフィス街にある銅像

日・米・フランス人、それぞれの働き方

フランスの看護婦マリエールさんは、春先に10日休暇を取ってスキーに行き、8月は3週間コルシカで過ごした。秋は子供の学校の休みに合わせて1週間休み、さらに「疲れを取るため」に年18日休暇を取った。それでもまだ過去の繰越分を含めて35日休暇があるので、新年度が始まる前に8日休むつもりだという。そして、新年度から休暇は58日分となる。

フランスでは2000年1月より、法定週労働時間が35時間となった。これは当時13%に近かった失業率の改善を目的として施行されたという。労働時間短縮と政府の雇用創出の投資で、失業率は9%にまで落ちた。

しかし、この記事を取り上げたニューヨークタイムスは、アメリカ人の労働時間短縮を支持しているわけではないようだ。マリエールさんは短い勤務時間で前と変わらぬ仕事をこなさなければならなくなり「よりストレスを感じるようになった」と訴えていること。商店の閉店時間が繰り上がったので、利用者にはとても不便になったこと。フランスの経済競争力が落ちるだろうと専門家が予測していることを紹介している。

アメリカ人はけっこうよく働く、というのが私の実感だ。朝7時か8時にはオフィスに出勤。ミーティングはたいてい朝8時からだ。ランチもテイクアウトやデリバリーで簡単に済ませることが多く、つるんでぞろぞろ昼を食べに出かける日本人とは大違いだ。そして6時にはさっと退社。その後は社会人大学に行ったり副業をしたり。よりよい仕事、ポジションをいつも探していて、投資や努力は惜しまない。

フランス人のマリエールさんは、家賃600ドルのこじんまりしたアパートと、2万ドルの年収に満足していると言う。
「フランス人はアメリカンドリームなんて信じないの。全員が上昇志向を持っても、全員分の仕事がある訳じゃない」
アメリカ人にこんな考え方は、とても出来ないだろう。

記事中で紹介されている国別の週労働時間では、フランスが平均29.5時間と圧倒的に少なく、イタリア(30.9時間)、英国(32.9時間)とヨーロッパの国が続く。アメリカは35時間でオーストラリアと並び、ダントツに多いのは韓国の47.1時間だ。日本はここでは紹介されていない。 「働きすぎ日本」のイメージは世界中に浸透していると思っていたが、そうでも無いようだ。

「日本人はワークアホリックじゃないよ。ただ同僚と一緒に長くいるのが好きなだけ」
「居酒屋でカンパーイ、カンパーイって飲んで、ワッハッハって笑ってさ。それが仕事だと思ってるんだから」

日本人と仕事をよくするアメリカ人達は、こう言う。その言葉があまりに当たっているだけに、私は日本人らしく曖昧に笑うしかなかった。実際、ニューヨークの和風居酒屋には日本人駐在員がいっぱい。お座敷もカラオケもあって、日本と変わらない光景がそこで繰り広げられている。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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