アメリカ三面記事便り
「Leona Helmsley:Queen of Mean (1990)」

裁判で話題づくり あの手この手

「人気歌手ブリトニー・スピアーズ、日本人ストーカーを訴える」という記事は、日本のメディアの情報で知った。アメリカでは殆ど話題にならず、日本人=ネクラ=ストーカーと大騒ぎになっているかというと、そんなことは無いので安心してほしい。
「90年代末に10代のポップスターとして君臨したブリトニー・スピアーズも、今はちょっとお休み中」とCNNは言う。そんな彼女がこの裁判で、「日本人の大金持ちも追いかける人気者」というイメージ作りをしたかったのだ、といううがった見方もあるようだ。

豊胸手術疑惑もある

訴えられた日本人の弁護士は「彼は日本のVIPであり、文化的な誤解があった」と釈明している。「ボクはあなたの追っかけです」くらいの意味でファンレターを書いたのかも知れないが、まるで「I'm chasing you」は、日本では普通なのだと言っているようだ。これこそ "cultural misunderstanding" を招くのではないかと思うのだが。

もうひとつ日本でのみ話題になったのは、マクドナルドを訴えていた肥満児たちの集団訴訟が、請求棄却されたというニュースだ。
アメリカでは訴訟が起きた時には、各紙がトップで取り上げたが、請求棄却のニュースの扱いはとても小さかった。日本は逆で、「マクドナルドは肥満の原因ではない」という裁判の結果が大きく報道された。
日本の広告業界にいる友人は言う。「マクドナルドは日本では大広告主だからね。訴えられたなんて、とても記事には出来ないよ」。 ニュースの取り上げ方にも、日本の気配り文化が出るのだろう。
最近話題の「Fat Land: How Americans Became the Fattest People in the World」

ニューヨークで最近賑わっているのは、不動産王ヘンリー・ヘルムズレーの未亡人レオナが、「ゲイであることを理由に従業員を解雇した」と訴えられている裁判だ。
「ゲイ差別などしたことはない」とレオナが他のゲイの従業員たちと腕を組んで現れれば、訴えた側は「ゲイだと言われて、泣いてしまった」「私の下着を着てみる?と言われた」「ドナルド・トランプやトム・クルーズのこともゲイだと言っていた」などと証言する。そんなことまで記事になるのは、レオナ・ヘルムズレーがかなり悪名高い有名人だからだという。

彼女のことを近所のオバちゃん達は喜んで教えてくれた。「エンパイヤ・ステートビルとか、ホテルをたくさん持ってるのよね」「元は不動産王の秘書だったのよ」「若い頃によぼよぼのおじいさんと結婚したんだわ」「美人でもないのに、自分でコマーシャルに出てね」「脱税がバレても一切認めなくて、何年も刑務所に入ったのよ」
その生活はフィリピンのイメルダ夫人と並び称されるぐらいの、ゼイタクぶりなんだそうだ。
レオナさんの「伝記」映画

そのレオナさんも今や82歳。そんな高齢でも、私生活は洗いざらい、愛人のことまでタブロイド誌のネタになっている。この裁判の記事もよく売れるようだ。 裁判の賠償請求は4千万ドル。エンパイア・ステート・ビルの買収価格の3分の一ほどにもなるという。「Queen of Mean(卑劣な女王)と呼ばれているくらいだからね。絶対払わないって、また言い張るんでしょ」

長引きそうな裁判に、マスコミもホクホクだろう。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



次へ
Top



All Rights Reserved, c 2003, Shinoda Nagisa