アメリカ三面記事便り
Fire!: The 100 Most Devastating Fires and the Heroes Who Fought Them

イタチのフランス、子犬の日本

ブッシュがイラクにUltimatum=最後通告を突きつけ、再びアメリカ国内でのテロ警戒態勢が厳しくなった。が、街は平静と言ってよく、月曜日にはセント・パトリック・デイを祝うパレードが華やかに行われた。

フランスが国連安保理で拒否権の発動をちらつかせていた時、「反仏」の動きがあちこちで起きた。レストランの店主が、「フレンチ」という言葉はもう使わないと、「フレンチ・フライ」を「フリーダム・フライ」と改名したり、フランス産のワインをジャージャーとトイレに流したり。数万円分のワインを無駄にしても、テレビで放送されれば数億円の広告効果になる。反戦なんだか販促なんだかわからないと皮肉って笑っていたら、アメリカの下院の食堂まで、議員の発案で「フレンチ・フライ」と「フレンチ・トースト」を名称変更した。どこの国にもパフォーマンスが好きな議員がいるということか。まるでフランスが宣戦布告の相手と言わんばかりだった。

ニューヨーク・ポスト紙では、フランス・ドイツ・ロシアの国連代表の顔は、イタチの写真にすげ替えられていた。イタチ(フランス)製品不買運動キャンペーンも毎日記事になり、水製品:ペリエ(フランス製)=ノン シュウエップス(イギリス製)=ウィなどと書かれている。記事の周りには切り取り線が付き、これを持って買い物に行きましょうというわけだ。イラク攻撃に賛成か反対か、各国の立場は一覧表になって新聞を賑わす。アメリカが孤立を深める事を心配するよりも、アメリカにたて突く国がある事が、気に障るようだった。

感じるのは、日本の影がとても薄いことだ。これまでに日本の立場が報道されたのは、3月10日のニューヨーク・タイムスの小さな記事だけ。「数週間も立場を明確にしなかった日本が、米国支持を表明」と見出しが付き、「国民的な論議は殆ど行われていない」と、日本人の関心の薄さが皮肉られていた。

3月17日のブッシュ大統領の最後通告に対する支持表明も、国際面の後ろの方に、ほんの小さく出たのみだ。(ニューヨーク・タイムス) 第一面の「世界中が困惑し、分裂を深める」という長文の記事では、各国の反応が詳しく伝えられる中、日本は「ブッシュ大統領への支持を公にしたほんの数カ国のひとつ」と、たった一言で片付けられている。

アメリカ人の友人に、「ところで、日本はforward=賛成なの、against=反対なの?」と聞かれても、答えようが無くて困った。
「日本はいつもvague=あいまいだし。でもアメリカには絶対逆らわないから安心して」と冗談めかして言っても、何の印象も無いようだった。
フランスがイタチなら、日本を塀の向こうで懸命に尻尾を振っている哀れな子犬に例えるのは行き過ぎだろうか?

今は子犬どころかイタチも、戦争への見切り発車でぱったり登場しなくなった。アメリカ人は自分のことを何に例えるのか、一度聞いてみたいものだ。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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