最近のトホホホホ…
お世話になったNYタイムスの仕事探しサイト

アメリカで新入社員になる

今年の春から、私はニューヨークの小さな家庭用品メーカーの社員になった。これからは日本向けにも商品を作って輸出していきたいと、日本人の経験者の募集があったのだ。

「日本の市場と消費者のことなら、私は何でも知っている」
「英語は3ヶ月で完璧にすると約束する」

アメリカ人以上にはったりを効かせて、私は面接を突破した。採用が決まった時には嬉しかったけど、そりゃあ不安も大きかった。なんせ会社には日本人など一人もいない。私は外国で働くのは初めてだ。ちゃんとやっていけるんだろうか、いじめられるんじゃないだろうか…。

就職祝いに食べに行ったパームレストランの巨大ステーキ
不安だったのは、私を採用した社長も相当だったようだ。人材募集の広告を出したら、来るわ来るわ、たくさんの履歴書が送られてきたという。ハーバードのMBAホルダーがその中に3人もいたらしい。だから私を採ろうと決めたのは、「とってもタフデシジョンだった」とあとで言われた。ちょっとムカついたけど、励まされたのだと解釈しておこう。

だから最初は、「とにかく全部の会議に出ろ」と言われた。会社にどんな人がいて、どんなふうに仕事をしているのか、まず把握しろと。そして会議が終わると呼ばれて聞かれるのだ。「お前は、さっきの会議の内容を何パーセント把握できたのか?」と。
そんな事聞かれても困ってしまった。はっきり言って、私には会議の内容はちんぷんかんぷんだった。だって、長く続いているプロジェクトの会議に途中から入ったって、経過がわかるわけがない。それに会社の扱い商品を「レードル」だの「ターナー」だのと言われても、何のことだかさっぱりわからなかったのだから。(レードルは、お玉。ターナーはフライ返しのことです)

どうやら社長は、会議で私がじっと黙っていたのが気に食わなかったみたいだ。
「わからない言葉があったら、進行をさえぎってでも聞け。意見があったらその場で言え」と言う。そんな図々しいこと、日本で育った私にはとてもできないと言うと、「アメリカの会社に入ったのなら、アメリカ人になれ」とまで言われた。そんな無茶な、トホホホホーと思いながらも、言葉の意味を隣の人にこっそり聞いたり、進行に合わせて「オー、イヤー」なんて頷いたりしてたら、社長から詰問されることは無くなった。

とにかく、下を向いてじっとしているのではなく、「私は参加してるんだ」とカラダで示すことが大切みたいだ。そして言いたいことがあったら、大声で言う。アメリカじゃあ会議で一人一人に「あなたの意見は?」なんて順番に聞くことはまず無いから、不意打ちされない分、楽なんだけどね。

セントラルパークに桜発見。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール




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