アメリカ三面記事便り
現在ワシントン近郊のオープンスペースに人影はないという

連続射殺魔プロファイリング合戦

10月7日(月)に学校前で中学生が8人目のターゲットとなって以来、メディアは連日トップでこの事件を報じている。日本のワイドショーと同様に様々な「専門家」が登場して犯人像を分析。33人の少年を殺害したジョン・ゲイシーや、連続強姦殺人のテッド・バンディなど、70年代に世間を震撼させたという事件まで掘り起こされて論じられている。

狙われた被害者が人種も性別もバラバラで何の関連性も無いことから、性的異常者による犯行ではないと結論付けられたようだ。報道を逐一聞いて次の犯行計画を練る犯人の目的は、殺人ではなく、世間を怖がらせることだと犯罪学の教授は言う。精神科の医師は、犯人は重度の躁病で異常な興奮状態にあるので、寝ずに犯罪を重ねているのだと警告する。

犯行現場近くに「Dear Policeman,I am God」と記されたタロットカードが落ちていたとスクープされてからは、テレビゲームとの関係が強く指摘されている。標的を次々仕留め、「私は神である」の呪文を唱えると、ゲームでは敵を制覇したことになるのだと。

それに対して、全米タロット協会の会長やオンラインゲーム会社の副社長が登場して、ゲームを楽しむ人を殺人鬼予備軍だと決め付けるのは間違いだと反論する。こういった分析が犯人逮捕に結びついたことはないと、企業弁護士が痛烈に批判する。

ローカルメディアがタロットカードの発見と「私は神である」のメッセージをスクープし、警察は記者会見の回数を減らしてしまった。抜かれた大手はくやしまぎれに「報道は捜査の助けか妨げか」と特集を組む。「私は神である」以外の言葉も書かれていたのだと推測する記事もある。

「犯行は月・水・木・金曜日にのみ起こるので次は明日だ」とか「午前中に何人、日中は何人、夜に何人襲われている」とか「撃たれた場所は胸何人、頭何人、背中何人」など、「統計的分析」が出来るほど犠牲者が増えてしまった。
バリ島で爆弾テロ事件が起きてからは、この事件も国際テロ組織の犯行だとする解説者も現れた。ガソリンスタンドやショッピングモールに行く人を撃つのは、経済的な打撃を狙っているからだと。

実際、車無しでは生活できないこの地域に住む人たちにとって、精神的なダメージはもちろん、生活に与える影響も深刻だ。ガソリンスタンドに行かなければ車が動かなくなり、ショッピングモールで食料の買出しをすることが出来なくなる。子供は外で遊ぶことを禁じられ、サッカー大会も中止になった。
「給油は、身体を左右に揺らしながらしているんだ。狙いにくいようにね」
インタビューに答ええる人は、まるでインベーダーゲームのインベーダーのように身体を揺らす。ユーモラスな動きとは裏腹に、笑い事ではない恐怖がひしひしと伝わってくる。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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