さっそくテレビをつけてみた。
無事にニューヨークに到着。
靴下まで脱がされてセキュリティチェックされると聞いていたのに、パスポートを一瞥しただけでフリーパス。
大切に抱えて持っていたおばあちゃん直伝の糠床を、なんて説明しよう、バイオテロだって疑われたらどうしようと、機内で懸命に辞書を繰っていたのに、拍子抜けだ。
アパートを見つけるまでの、仮住まいのホテルにチェックイン。さっそくテレビをつける。
テレビの上にリモコンが3つも載っていて、どれが何だかよくわからない。
面倒くさいので、テレビをつけたときに最初に出てくる番組をずーっと見続けることにした。
その番組では、一般ピープルが順繰りに出てきて、色々な「告白」やら「告発」をする。
まるで裁判所のようなセットで、恋愛問題、出生の秘密、ゲイである事の告白…など、色々な悩みや怒りが、実名で公開される。まるで裁判官のように司会者がそれをさばく。観客は囃したりもらい泣きしたり忙しい。
英語に慣れるためとはいえ、そんな話題にいささか辟易していた頃に、部屋の電灯を直しにメンテナンスマンが入ってきた。
ワイドショーをじっと見ている私がヒマそうで哀れに思えたのか、
「追加料金はかかるけど、日本語の放送も見られるよ」 と教えてくれる。
「英語の勉強のために、これを見ているんだけどね」 私が答えると
「こんなショーは良くないよ。うちのワイフは絶対見ないよ」とNBCニュースの出し方を教えてくれた。
「アメリカ人みんなが、こんな告白ごっこが好きなんだと思った」と言ったら
「そんなことないよ! 浮気の話ばっかりだろ? ボクのうちには絶対無いよ」とまじめに言う。
NBCニュースでは、武器を持った犯人に少女が二人誘拐されて、依然逃走中という実況をやっている。
「これがアメリカさ」
メンテナンスマンが教えてくれた。
「どうもありがとう」
こんな調子ですが、引き続きテレビウオッチングを続けます。
(...続く)
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