アメリカ三面記事便り
横田早紀江(著)「めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる」

拉致問題の米紙意見広告への反応はいかに

アメリカでのアジアに関する報道といえば、イラク攻撃か北朝鮮の核疑惑のオンパレードだったが、韓国の大統領選への注目率は高かった。反米感情の裏返しで、北朝鮮との融和策を謳う候補が当選したと仔細に報道。
「アメリカは年間30億ドルもの税金を韓国の防衛のために使っているのに、なぜ韓国人は我々を嫌うのか?」と、ニューヨーク・タイムズは特集を組んだ。
引き裂かれて焼かれる星条旗と、「アメリカ人お断り」と大書された喫茶店でお茶を飲む若い女性の大きな写真を掲載。「韓国の若者は、北朝鮮が同胞に大量破壊兵器を使うわけがないと信じているように見える」と、記事は嘆き節だ。

ニューヨーク・タイムズのたしなめ口調は、曽我ひとみさんとその夫ジェンキンス氏について報じた時にもあった。「日本は拉致被害者のホームドラマ一色」とタイトルした記事では、「世界の指導者達が憂慮している北朝鮮の核兵器製造疑惑を、日本人はソガ-サン&ジェンキンス-サンのヒューマンドラマにすり替えている」と皮肉った。

そのニューヨーク・タイムズに12月23日、日本のジャーナリストや大学教授7人の署名入り意見広告が載った。「THIS IS A FACT(これは事実です)」という大きなタイトルとともに、日本人なら連日目にしている横田めぐみさんの中学校の入学式の時の写真と、「読者達へ」と「金正日総書記へ」とする英語とハングル文字の文章だ。
読者には拉致問題の概要を説明し、金正日総書記には「この問題はまだ決着していない」と調査団の受け入れ、情報の開示、拉致被害者全員の帰国を求めている。

意見広告を出すという姿勢を、ニューヨーク・タイムズは高く評価するようだ。戦争反対とイラクの主権の尊重を訴えるため、俳優のショーン・ペンが12月半ばに単独でイラクを訪問した。大衆紙やテレビが一斉に「サダムのペンパル ショーン・ペン」と批難する中、ニューヨーク・タイムズの報道は一線を画していた。「ショーン・ペンはワシントン・ポストに5万6千ドルも使ってブッシュの対イラク政策を批判する広告を出した」と、ほぼ一面の記事で、彼の意見をきちんと紹介していた。

拉致問題は今までアメリカでは殆ど報道されなかった。されてもちょっと引いたような視点ばかり。この意見広告で、ニューヨーク・タイムスの報道の論調がどう変わるか、変わらないかは、とても興味深いところだ。

参考)
意見広告7人の会

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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