アメリカ三面記事便り
「A Yankees Collection」

アメリカから見たヒデキ狂想曲

「まるでビートルズかシナトラがやってきた時のようだ」
松井選手を追いかけてきた日本の報道陣の加熱振りは、こう紹介されている。松井選手が到着する日のニューヨークの空港は日本の報道陣がぎっしりで、「アメリカ人はほんの4-5人」。12時からの入団記者会見には朝6時から日本人記者が集まり、「9時にはスプリングスティーンのコンサート会場のようになった」。そして「日本人記者は、松井のヤンキース入団で、自分もニューヨークに住めるようになったことを、すごく喜んでいた」という。

ニューヨーク・ポストの記者バッカーロ氏は、松井選手の入団記者会見に行き、日本人記者たちに取り囲まれて質問攻めにあった。
「松井はどうやってプレッシャーを克服したらいいでしょうか」
「今年、何本ホームランを打つと思いますか?」
「彼は今年オールスターに選ばれるでしょうか」
彼は「まるで、自分が記者会見に出ているようだった」と記事を書いている。

松井選手にはきちんとしたブレーンがついているのだろうと、氏は分析する。終始爽やかに歯を見せて笑い、「がんばります」と40通りの言い方で繰り返す。彼が演じている「ニューヨークにあこがれてやって来た、成功を目指す好青年」というスタンスは、ニューヨーカーの心をくすぐるツボだ。

その夜、その笑顔のまま松井選手は、コメディー番組「レイト・ショー」に出演。人気コーナー「トップ10」で「ヤンキーズに入団するワケ」を披露した。本人は日本語でしゃべり、英語の字幕が付いたが、ウインクまでして大熱演。ウケていたのは、「英語の字幕に較べて、日本語がずいぶん短いんじゃない?」と司会が突っ込んだ時と、「ニューヨークでは英語をしゃべらなくても大丈夫だから」と松井選手が言った時だった。

毎日放映されるトップ10は、辛らつなジョークで人気があり、97年7月には、その年鳴り物入りでヤンキースに入団した伊良部選手が槍玉にあがっている。

Top Ten Ways to Mispronounce Hideki Irabu
【ヒデキ・イラブのもじり方トップ10】
10.Hidooby Irooby このマリファナ野郎
9. Hiccupping Caribou しゃっくりトナカイ
8. Pataki, I Love You パタキ知事、愛してる
7. Snoop Hideki Deck 犯罪暦のあるラップ歌手のもじり
6. Hideki Irabooted-Down-To-The-Minors マイナーリーグに蹴り出せ
5. Iraboutros-Boutros Hideki お前は国連のお偉いさんか?
4. You Rub Me, I'll Deck You 契約金の分、殴ってやる
3. Mike Tyson Ear Chew マイク・タイソンの耳噛み試合並
2. You Don't Know Deki 何にもわかっちゃいないだろ
1. 12 Million Dollar Booboo 1200万ドルの大失敗

松井選手の契約金は3年で2100万ドルという。しかし、ヤンキースファンは今のところ、「同じヒデキがやってきた」ということには気づいていないようだ。

「彼は日本からお客さんを大勢連れてきてくれるだろ? それが重要なのさ」と、アメリカ人の友人は言う。入団記者会見に同席したブルームバーグNY市長も「たくさん買い物してね」と、松井選手に真剣な表情で語りかけていた。

「あこがれのニューヨークで、お買い物」
日本人の夢はそれだけではないということを、松井選手にはぜひ証明してほしいものだ。


参考)
ニューヨーク・ポスト バッカーロ氏の記事
CBSレイトショーハイライト 1/14/03に松井選手が登場

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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