アメリカ三面記事便り
Powers of Attorney

妻殺し疑惑、長引かせたいのは誰?

サンフランシスコ湾で4月半ば、へその緒がついた胎児と、首が無い女性の遺体が発見された。DNA鑑定で身元が明らかになり、その夫が逮捕されると、メディアは大騒ぎになった。女性が去年のクリスマスイブから行方不明になっていた、妊娠八ヶ月だったレーシー・ピーターソン(27)だったからだ。(⇒彼女の行方不明時の記事はこちら) 夫のスコット・ピーターソンはメキシコに逃亡する所だったとも言われ、髪を金髪に染めてひげを生やし、ダイエットまでしていたという。

逮捕されて2週間過ぎても、スコットは未だに妻殺しを認めていないので、メディアはこれ幸いと、あの手この手でこの事件を取り上げている。イラク戦争がはっきりしない終わり方をし、ニュースやバラエティー・ショーも、表面的には戦争以前の調子に戻ったが、視聴率もネタ的にも、パッとしていなかったのだ。

スコットは、妻と生まれる前の息子の2人の殺人罪で逮捕されたが、物証は少ない。本人が自供しなければ、有罪になるかどうかは裁判次第となる。死刑となるのか、OJシンプソン裁判の再現となるのか、各専門家が熱心に分析合戦をしている。
「独占インタビュー」として、妻レーシーの遺族や友人、夫スコットの家族が代わる代わるメディアに登場するので、レーシー側の遺族の恨みぶりや、スコットの生い立ちや人となりまで、詳しくなってしまった。
ちなみに、スコット・ピーターソンは7人兄弟の末っ子で、子供の頃から一人で釣りに没頭するようなタイプ。学生時代はゴルフの選手で、グリーン上では終始冷静にプレイしていたそうだ。1月に妻の行方を案じる夫として、テレビのインタビューに登場した時と、逮捕された現在の写真を比べて、新しい髪形やファッションはイケてるか、イケてないかを論じる記事もあった。

スコット側が、有名弁護士マーク・ジェラゴス氏を雇ったので、事態はますますメディアが喜びそうな方向へと行きそうだ。ジェラゴス弁護士は、女優のウィノナ・ライダーの万引き事件や、麻薬使用で逮捕された俳優のロバート・ダウニー・ジュニアの弁護を手がけ、今回の事件の解説にも度々登場していた。「スコット・ピーターソンを有罪にする事など簡単だ」と言っていたはずなのに、なぜ彼の弁護を引き受けたのか。1時間500ドルも取る彼の弁護費用を、誰が払うのか。ジェラゴス弁護士に勝算は本当にあるのか。新しい話題がまた提供された。

「ジェラゴス弁護士の先週1週分の費用すら、スコット・ピーターソンは払えないはずなんです」とレポーターが言うのを聞きながら、「このTV局が弁護士費用を負担しているんじゃないかしら?」と思ってしまうのは、私だけではないはずだ。

参考)
スコット・ピーターソンがジェラゴス弁護士と法廷に登場した事を伝える記事(NYデイリーニュース)

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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