2013年11月11日 持田直武
オバマ大統領が四面楚歌の苦しい立場に立った。友好国首脳に対する盗聴疑惑が拡大したほか、中東外交ではプーチン大統領に出し抜かれ、任期中最大の功績となる筈だった医療保険改革でもスタートからつまずいた。同大統領の統治手法に問題があるとの批判が高まった。 ・大統領はビッグ・スピーチがお好き
就任以来5年、オバマ大統領の行政手腕が問われている。ワシントン・ポスト紙のホワイトハウス担当記者スコット・ウイルソン氏は10月30日の紙面(電子版)で「オバマ大統領は大規模な政策構想を打ち出すが、その実施の過程には余り関心を払わない」と次のように書いた。「彼は議会を説得する場合でも圧力を加えるのではなく大演説(Big speech)をするのを好む。小さな改革を積み重ねるのではなく大改革(Big reform)が好きだ。外交面では各国首脳と緊密な関係を構築するよりもむしろ野心的な外交方針(Big foreign policy ambition)を打ち出す方を選ぶ」 ・歴史的実績として国民皆保険の設立目指す
オバマ大統領はすでに就任以来5年目、任期中の実績として何が後世に残るかを問われる時になった。しかし、今のところこれと言った業績は見当たらない。これまでは同大統領が現在推進中の医療保険改革が実績として歴史的にも評価されるとみられていた。同改革が成功すれば、先進国で唯一国民皆保険の制度がない米国も国民皆保険になるからだ。同制度の導入は20世紀初頭のセオドア・ルーズベルト大統領はじめトルーマン、ニクソン、クリントンなど民主、共和両党の大統領の念願だった。しかし、市場経済を重視する保守派の反対が強く果たせなかった。オバマ大統領が同制度の設立に成功すれば歴史的偉業となるのは間違いない。ところが、最近はこれも実現の見通しが危うい状況になってきた。原因は部下との情報共有を軽視したオバマ大統領の統治手法に起因している。
・共和党保守派は医療改革法の撤廃を目指す
オバマ大統領は就任1年目の09年に国民皆保険を目指す医療保険改革法案を議会に提出。国会審議は、当時民主党が上下両院で多数を占めていたため同法案は共和党の反対を押し切って通過した。しかし、共和党は翌10年の中間選挙で巻き返し、上院は民主党が多数派になったものの下院は共和党が圧倒的多数を占め米議会はねじれ状態となった。特に下院には共和党の保守強硬派ティー・パーティ系の議員が多数登場し、今年夏の予算審議では民主党編成の14年度予算案から医療改革に関連する予算を全額削除するよう要求して対決。議会を機能不全にし、政府行政機関を一部閉鎖に追い込んだ。また、政府の債務総額上限の引き上げにも反対、米国政府が債務不履行になる危機に追い込んだ。 掲載、引用の場合はこちらからご連絡下さい。 持田直武 国際ニュース分析・メインページへ |
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