2007年7月23日 持田直武
北朝鮮が核施設の無能力化を年内に実施する案に待ったをかけた。ほかの6カ国協議参加国も同時に約束を実行するべきだとの理由だ。北朝鮮代表の金桂寛外務次官は核施設を解体するためには重油提供のほか、米の敵視政策の転換、軽水炉の提供も必要と主張。北朝鮮が核施設の無能力化の見返りに何をねらっているかを示唆した。 ・核兵器計画を無能力化する条件
今回の6カ国協議の焦点は、北朝鮮がすべての核計画の申告と核施設の無能力化を年内に実施するかどうかだった。協議開始に先立って、北朝鮮が核施設の稼動を停止したことで、年内の無能力化に応じるとの期待が高まった。しかし、北朝鮮は応じなかった。21日のワシントン・ポストによれば、米代表のヒル国務次官補はその理由について「北朝鮮が無能力化と同時に、ほかの協議参加国も重油提供のほか、外交関係の改善などの約束を実施するべきだと要求したためだった」と説明した。北朝鮮の無能力化だけを先行して実施することはできないというのだ。 ・在韓米軍の撤退も条件の1つ
6カ国協議の北朝鮮代表がこうした要求を続ける一方で、北朝鮮の人民軍板門店代表も13日声明を発表、在韓米軍の撤退を話し合う米朝と国連を交えた協議開催を要求した。同声明は、在韓米軍の駐留を決めた米韓相互援助条約は、すべての外国軍隊の撤退を決めた休戦協定を無視して調印した違法条約と主張。休戦協定60条に従って米朝と国連による会談を開催し、在韓米軍の撤退問題を解決するよう要求している。6カ国協議で金桂寛外務次官はじめ外務省当局者の主張と並行して、北朝鮮軍部も敵視政策の転換を要求する姿勢を示したものだ。 ・北朝鮮の戦略的決断とは
米は北朝鮮に対し、戦略的決断をするべきだと説得してきた。リビアのように核兵器開発を放棄すれば、米はじめ国際社会との関係を改善することができて、国の安全も保障されると主張してきた。これに対する北朝鮮の答は今のところわからない。しかし、リビア方式に乗らないことだけは確かなようだ。北朝鮮はむしろ、行動対行動の同時行動原則を守り、米の敵視政策の一つひとつをねらって交渉を続けてゆくと見るほうがよさそうだ。そして、最後まで核兵器を維持しようとするだろう。これが北朝鮮の戦略的決断と言えるのかも知れない。
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