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オバマ大統領の再選に暗雲
持田直武 国際ニュース分析

2010年8月8日 持田直武

オバマ大統領の支持率が就任以来最低の40%台前半に落ち込んだ。11月2日に迫った中間選挙では、民主党の大敗は確実。苦戦の民主党候補の中には、オバマ大統領が選挙の応援に来るのを断る例が増えている。景気が回復せず、失業率が高止まりする状況が続けば、2年後オバマ大統領の再選も難しいとみられている。


・中間選挙を控え民主党の選挙の顔も出番なし

 オバマ大統領は上院議員当時から民主党の選挙の顔だった。応援要請が殺到し、全国各地を飛び回った。ところが、今回の中間選挙では様子が一変した。民主党候補の中には大統領の選挙応援に迷惑顔をする向きがあるというのだ。7月31日のニューヨーク・タイムズによれば、オバマ大統領は民主党下院議員9人と昼食を共にした席で、この問題を自ら持ち出し、「選挙に勝つためなら如何なる支援もする。応援に行かないほうがよければ行かない」とまで口にしたという。

 8月3日のホワイトハウスの記者会見でも、記者の1人がこの問題を取り上げて質問した。「06年選挙や08年選挙では、民主党候補の誰もがオバマ大統領の応援を求めた。今回求めないのは何故か?」。この質問に対し、ギブズ報道官は「過去の選挙でも、オバマ大統領は全米50州に応援に行ったわけではない。候補からの応援要請があり、応援する意味があると判断した場合、選挙区に行って手助けをした。しかし、要請がなければ行かない」と答え、今回は要請がないことを暗に認めた。

 応援要請がない理由は、オバマ大統領の支持率低迷だ。米選挙世論調査所(USA Election Polls)によれば、オバマ大統領の支持率は夏に入って低迷、8月6日時点の平均支持率44.3%、不支持率は50.9%。平均支持率が40%台前半に落ち込むのは初めてだ。大統領の支持率と並行して民主党の支持率も低下、上記の選挙世論調査所が集計した平均支持率は民主党41.8%、共和党41.3%の僅差。ギャラップの6月中旬の調査では、共和党49%、民主党44%で共和党優勢との結果も出た。


・中間選挙で民主党は大敗との見方

 この世論の趨勢が続けば、11月の中間選挙で共和党の躍進は間違いない。米議会の構成は、下院が定数435、内訳は民主党255、共和党178、欠員2。下院は全議席改選で、共和党は今の順風が続けば過半数を奪還するのは容易と見られている。一方、上院は定数100、内訳は民主党系59、共和党41。このうち改選は民主党19、共和党18。共和党が過半数を獲得するには現有の18議席を守った上で、さらに10議席の上乗せが必要だが、これは難しいとの予想が多かった。

 ところが、7月になって情勢が変わった。19日のウオール・ストリート・ジャーナル紙によれば、カリフォルニアやウィスコンシンなど現在民主党が議席を持つ11州で共和党候補が支持率を上げ、共和党の過半数奪回もあり得る状況になった。これに逆比例してオバマ大統領はじめ民主党幹部の支持率が低下する。ハリス社の調査によれば、バイデン副大統領は支持率26%、ペロシ下院議長は20%、リード上院院内総務は33%、クリントン国務長官だけが例外で支持率45%、不支持35%だ。

 この背景にあるのはオバマ民主党政権に対する有権者の不満だ。オバマ政権が新医療保険などで財政支出を増やし、赤字を拡大させたことや、景気の低迷と失業率の高止まりを解決できないことなどで、有権者の民主党離れが起きている。ウオール・ストリート・ジャーナルが6月23日に発表した世論調査によれば、米国が間違った方向に進んでいると考える有権者は62%に上るという。景気が回復しなければ、2年後のオバマ大統領の再選にも影響しかねない状況なのだ。


・ヒラリー・クリントン待望論が急浮上

 民主党内ではオバマ大統領が2012年の大統領選挙で再選を目指すと見るのが常識だった。ギャラップの調査でも、5月の段階で再選支持は46%、6月も46%とほぼ半数が再選を支持した。ところが、キニピアック大学世論研究所の7月中旬の調査では、オバマ大統領の再選支持は36%に急落した。代わって、共和党の候補に投票するが39%とオバマ大統領を上回った。この世論の動きと並行して、マスメディアにはヒラリー・クリントン待望論が浮上した。

 クリントン国務長官自身はこの件に関する発言を慎重に避けている。しかし、ワシントン・ポスト(電子版)は6月18日、ジャーナリストのサリー・クイン女史が執筆した「ヒラリー・クリントンを副大統領に」という提言を掲載。内容は「オバマ再選を実現するには、中間選挙後にクリントンを副大統領に任命し、12年の大統領選挙はオバマ・クリントンのコンビで乗り切る」というもの。そして、16年選挙でクリントン大統領の実現を目指すというのだ。

 クリスチャン・サイエンス・モニター紙(電子版)も8月2日、12年の大統領選挙が「クリントン対ペイリン」両女史の対決になると指摘する記事を掲載した。ペイリン女史は前回の大統領選挙で共和党副大統領候補として旋風を巻き起こした元アラスカ州知事。最近はティーパーティ運動の顔として全米を遊説、ギャラップの調査では好感度76%で共和党の次期大統領候補のトップに立っている。支持率の低下と並行して、メディアの焦点もオバマ大統領から離れていることがわかる。


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