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米大統領選挙 共和党保守派のあがき
持田直武 国際ニュース分析

2012年1月15日 持田直武

共和党の大統領候補指名争いはロムニー候補が指名獲得に王手をかけた。保守派候補が潰し合いを演じる一方で、穏健派の同候補がアイオワ州の党員集会に続いてニューハンプシャー州の予備選挙でも勝利。次のサウスカロライナ州予備選挙で勝てば、指名争いは事実上終わりとの見方も出ている。党内保守派はまだ同派から対抗馬を立てる動きを続けているが、候補者難は否めない。


・ロムニー候補が党候補指名に王手

 共和党の大統領候補指名争いはマサチューセッツ州元知事のロムニー候補が序盤戦で連勝、指名獲得に王手をかけた。得票率も1月3日のアイオワ州党員集会では25%だったが、10日のニューハンプシャー州予備選挙では39%に一気に上昇した。同候補は昨年末まで世論調査で支持率25%を超えたことがほとんどなく4分の1候補などと揶揄された。ところが、予備選挙に入って一気に4分の1の壁を突破したことで、今後の展開に弾みが付くとの期待が出た。

 今後の予備選挙の日程は1月21日サウスカロライナ州予備選挙、1月31日フロリダ州予備選挙、2月4日ネバダ州の党員集会と続き、3月6日には全米10州で党員集会と予備選挙が集中するスーパーチューズデーの山場になる。各社の世論調査で、ロムニー候補はサウスカロライナ州でも20%後半の高い支持率で1位の座を確保している。21日に実施される同州の予備選挙で、ロムニー候補が支持率に見合う得票を獲得できれば、この時点で同候補の指名獲得が事実上決まるとの見方も出ている。


・ティー・パーティ運動にもロムニー支持が浸透

 穏健派のロムニー候補が有利となった背景には支持が保守層にも拡大したことが挙げられる。ワシントン・ポスト紙がニューハンプシャー州予備選挙の際に実施した出口調査によれば、同予備選挙で投票した有権者の内訳は「強固な保守派」が21%、「穏健保守派」が32%、「穏健リベラル派」が47%。この3派のうち、ロムニー候補に投票したのは「強固な保守派」の33%、「穏健保守派」の48%、「穏健リベラル派」の38%だった。ロムニー候補の支持者はこれまで「穏健派」の枠内に止まっていると言われてきたが、ニューハンプシャー州予備選挙の結果は、支持が「穏健派」だけでなく、他の2派にも幅広く浸透していることを示した。

 また、このロムニー候補の支持層拡大は共和党系の草の根組織「ティー・パーティ運動」にも及んでいる。上記ワシントン・ポストの出口調査によれば、ニューハンプシャー州予備選挙で投票した有権者のうち、ティー・パーティ運動を「強く支持する」と答えた有権者は22%。「ある程度支持する」が29%。このうち、ロムニー候補に投票した有権者は「強く支持する」と答えた有権者の36%。「ある程度支持する」と答えた有権者の44%だった。

このほか、ロムニー候補の支持層拡大はティー・パーティ運動と並ぶ草の根の全国組織「キリスト教福音派」でも顕著になっている。ワシントン・ポストの調査によれば、ニューハンプシャー州予備選挙で投票した「福音派」の信者は全体の22%。このうち31%がロムニー候補に投票したと答えた。これは共和党候補6人のうち最も多い得票だった。ロムニー候補は米国では少数派のモルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)の信者で、福音派のような米国の伝統的キリスト教組織との間には壁があるとみられていた。ところが、同候補はニューハンプシャー州では、この壁を簡単に乗り越え、指名獲得に王手をかけたと言われるまでになった。


・共和党保守派指導層は「ロムニー阻止」に立ち上がる

 この事態を見て、共和党保守派指導層が困惑を深めている。ロムニー候補がかつて人工妊娠中絶や同性結婚を容認するなど、保守派の政治信条と相容れない主張をした経歴があるためだ。同候補は03年から07年までマサチューセッツ州知事をしたあと08年の大統領選挙に立候補。この時の候補者討論会で「私はマサチューセッツ州知事として『女性の選択の権利』を守るため全力を尽くした」と知事時代に妊娠中絶を支持したことを自賛した。女性の選択の権利とは女性が子供を産むか、産まないかを決める権利を持つとする主張である。その後、同候補は中絶反対の方針に転換するが、保守派指導層は疑っている。

 ロムニー候補がニューハンプシャー州の予備選挙で勝利した3日後、保守派指導層はふた手に別れて「ロムニー阻止」の行動を起こした。1つは、キリスト教福音派の行動で同派傘下の教会指導者や活動家150人がテキサス州に集合、ロムニー阻止の戦略を練った。もう1つは、ティー・パーティ運動に参加している各組織の指導者がサウスカロライナで合同会議を開催、活動家500人が集まった。会議の詳細はまだわかっていないが、21日のサウスカロライナ州の予備選挙でロムニー候補に対決する保守派候補を1人に絞って得票を集中させ、ロムニー候補が1位になるのを阻止する戦略を考えているようだ。共和党の指名争いは1つの山場を迎えたと言える。


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