キモノでトスカーナ+温泉・ビーチ
1.フィレンツェのお得ホテル
2.美術館や、2階建て観光バスや、テルメなど
3.フィレンツェと近郊のレストラン
4.コッレ・ディ・ヴァル・デルサ
5.Toscanaの伊豆、ビアレッジオ



中世の街並に、中世の文学の傑作 源氏物語「夕顔」の章のモチーフの帯

4.コッレ・ディ・ヴァル・デルサ 知らずに来た中世の町

そこに二つ星レストランがあるからという、それだけの理由でコッレ・ディ・ヴァル・デルサというトスカーナの山あいの町にやってきた。
私たちがよく行く中目黒のイタリアン、バッチョーネの小島シェフもここに居たことがあるという。フィレンツェから車で45分くらいかかるところにあるので、タクシーで行き、ついでにそこに一泊することにする。荷物をタクシーに積み込んで、運転手さんにコッレ・ディ・ヴァル・デルサのレストランホテル アルノルフォに行って頂戴、と言っては見たものの、甘かったようで。
イタリアのタクシーの運転手さんならイタリアのどんな街のホテルの場所もわかるだろうという決め付けは、安直過ぎたのだった。

フィレンツェからフリーウェイを快調に飛ばして、山あいのコッレ・ディ・ヴァル・デルサに来たものの、ホテルアルノルフォの場所がわからない。
ふもとの街中をぐるぐると走り回りながら色々聞いてもらい、このエレベーターで上がるんだって、と山のふもとの洞窟の入り口で降ろされてしまった。

エレベーターで上がったら確かにそこは小さな古い街の入り口だったんだけど、実はアルノルフォは細長いこのエリアの反対側の、石畳の坂道をずっと上がった所にあった。
延々と続く狭い石畳の登り道を、大汗をかきながら大きなトランクを押し上げて歩くのは本当に大変だった。その時は、ガタガタの道や狭い回廊のような街並みを恨めしく思ったけれども、何とここは1000年も前に栄えた中世の都市なんだそうで。フィレンツェよりも古い歴史があり、世界的なクリスタルガラスの産地であるということは後から知った。


やっと目的のレストランホテル アルノルフォにたどり着いた時は、何でこんなに苦労してここまで来たんだろうと思ったけれど、部屋に案内されて窓から見る景色に息を呑んだよ。
糸杉やポプラの雑木の間に、収穫を終えた小麦畑が広がり、夕日に輝いている。鳥がさえずりながら飛び回り、ニワトリの鳴き声がどこからか聞こえてくる。窓からの涼しい風を受けながら、ああこれがトスカーナの風景かと、今までに見た色んなトスカーナ礼賛映画のシーンを思い出した。

重いトランクを押し続けたせいでメリメリいう腰を伸ばしながら、しゃれた作りのバスルームでシャワーを浴び、汗を流してお着替えタイムとする。この日は二つ星レストラン アルノルフォに敬意を表して、持っている夏物の中で一番いい着物と帯を着る日であり、同行者Gの着物(浴衣だけど)デビューの日でもあるのだ。

海外で外国人に混ざって体型や体格で負けずにオシャレするためには、着物を着るのが一番と私は思っている。そんな時にもGはいつも洋服だったけれど、今回旅行の前にヤフーオークションで安い男物浴衣セットを落としてあげたら、外国でなら着てもいいと言うではないか。
着物デビューの準備中
着物なんて一枚も持っていないGが、タモトや帯を扱いあぐねて、もう着ないといつ言い出すかと、内心ちょっと心配だった。けれど、本人はわりと簡単に着付けも覚えて、けっこう機嫌よく着ている。ジャケットを着なくてはならないような星のレストランでも、ジャケットを着るより涼しくて楽だから着物がいいと言う。しめしめ。

イタリアなら浴衣で星のレストランに行っても誰もマナー違反だと咎めないからで、日本の格式あるところではこうはいかないと思うけれどもね。


Gのレストラン評 アルノルフォ
アルノルフォのダイニングはオープンエア。僕らのテーブルがアウトサイドに確保されたこともあって、テーブルに座ると視界いっぱいに森と畑の景色が広がる。食事の途中で暗くなると今度は星空になる。何と素敵な舞台であろうか。

コースは魚料理中心の"Contemporary"(110ユーロ)と肉料理中心の"Heritage and Tradition"(95ユーロ)があり、後者を選ぶ。ワインは、フロアマネジャー兼ソムリエGiovanni Trovato氏(シェフのお兄さん)ご推薦のブルネッロ・ディ・モンタルチーノSalvioni2001年。相当な高級ワインだが、超一流の料理を受けて立つには止むを得ない。

アミューズ3種「トマトとリコッタチーズ」「カジキ」「ウサギとブルーベリーソース」。前菜2皿「ナスのフリット、プチトマト、モッツァレラチーズ、スイカ」「鳩の胸肉と赤玉葱とフォアグラ、鳩の腿肉と白玉葱」。プリモは「トルテッリ、ウサギ、白インゲン豆、ベーコン」。セコンドは「仔牛のフィレ2種とインゲンとニンジン、仔牛レバーと白玉葱」。そして「羊と山羊のチーズ盛り合わせ」。

前菜の鳩、プリモのウサギ、セコンドの仔牛。野菜。チーズ。トスカーナの伝統農家から最高の素材が選ばれ、最高の技術で調理され、最高の舞台で供された。僕たちはすべての料理を慈しむように食べ尽くした。

最高の料理と最高のワインが最高に幸せな時間を演出してくれて、時の経つのを忘れるほどであった。お茶の時間にスターシェフGaetano Trovato氏が挨拶に来てくれたので、立ち上がって握手して感謝の気持ちを伝えた後、バッチョーネ小島さん(昔この店で修行していた)から託されたカードを渡す。幸せすぎる時間もいよいよおしまい。シェフとソムリエの兄弟におやすみを言って、階段を登って部屋に戻って就寝。

ポルトガルはアルブフェイラのヴィラ・ジョヤ、フランスはエクサン・プロバンスのクロ・ド・ラ・ヴィオレッテ、そして今日のアルノルフォが僕のオールタイムベスト3かもしれない。(以上、Gのレストラン評)


レストランは10組ぐらいのお客さんで満席で、レストランのホテルにも泊まったのは、そのうちの3組ほど。チェックアウトの時に一緒になった、フィレンツェからきたというカップルは、18回目の結婚記念日なのでここに来たけれど、ここはトスカーナで一番のレストランだよ、と自慢っぽく語っていた。
アルノルフォに泊まった翌朝は、前日にひいひいトランクを押し上げたコッレ・ディ・ヴァル・デルサの街を、二人で浴衣を着てお散歩。
昨日は延々と続くかと思えた石畳の道も、やたら狭くて通り過ぎる車に邪魔にされた道も、石造りのアーケードも、ルネッサンス以前の由緒ある街並みだったんだと知れば大変ありがたく美しく目に映る。道行く人たちや、古い石造りの家の玄関に座っているおばあさんたちが、珍しそうにボンジョルノと挨拶してくれる。
そう、私たちは昨日汗だくでトランクを押していたあの怪しいアジア人2人組なの。おかげさまで無事ホテルに着いて、今朝は浴衣着てお散歩してます。という私の心のメッセージが皆さんに伝わったかどうか。

Next
1.フィレンツェのお得ホテル
2.美術館や、2階建て観光バスや、テルメなど
3.フィレンツェ及び近郊のレストラン
4.コッレ・ディ・ヴァル・デルサ
5.Toscanaの伊豆、ビアレッジオ


Top 休暇ゼイタク主義



All Rights Reserved, c 2002-, Ryoko Zeitaku Shugi