キモノでトスカーナ+温泉・ビーチ
1.フィレンツェのお得ホテル
2.美術館や、2階建て観光バスや、テルメなど
3.フィレンツェと近郊のレストラン
4.コッレ・ディ・ヴァル・デルサ
5.Toscanaの伊豆、ビアレッジオ



ホテルのテラスから見えた海上の帆船。どんなお金持ちがどこから来たのかしら…。

5.トスカーナの伊豆、ビアレッジオ

コッレ・ディ・ヴァル・デルサの次は、トスカーナの西側の海辺のリゾート地、ヴィアレッジオに行く。アルノルフォのシェフもそのお兄さんのソムリエも、一度フィレンツェまで車で戻ってそこから列車に乗るのが一番だとアドバイスしてくれる。
地元の人がそういうのだから、素直にその通りにしたけれど、実は列車はコッレ・ディ・ヴァル・デルサとフィレンツェの中間、エンポリを通ってヴィアレッジオに通じていた。だから車でエンポリまで行ってそこで列車に乗れば、時間もお金も節約できたんだけどね。
いくらイタリアの地元の人とはいえ、いつも車で生活していて列車になんて乗らないだろうから、知らないんだろうな。実際列車はいつもがらがらに空いていて、乗っているのは旅行者ばっかり。車内ではイタリア語より外国語が多く聞こえた。

ビアレッジオに行くことは、やっぱりミシュランを見て決めた。トスカーナの海岸地域には星のレストランがいくつか点在しているんだけど、ビアレッジオはその中心にあるので、どのレストランに行くにも都合がいいな、という理由で。ホテルも赤字で表示されている良さそうなのがあるし。
その赤字表示のホテルプリンチペピエモンテは、立派過ぎちゃって1ユーロ168円で旅行しようっていう私たち日本人にはビックリするようなお値段だった。

でもホテルのウェブを見ると、クラシックな感じのステキなインテリアだし、屋上にはプールとジャグジーもあると書いてある。山側の一番安い部屋でいいやと恐る恐る問い合わせたら、ウェブの表示よりはだいぶ安い値段提示があって、思い切って泊まることにした。
行ってみたら部屋はスイートにアップグレードされていた。天蓋つきのベットが二つ並ぶベッドルームと、大きな応接セットがどんとある居間というあまりに広いふた部屋を、もてあまし気味に使った。

このホテルには近隣の色々なレストランの予約を日本からメールで頼んでいて、いったい日本からどんな客がくるのだろう? 毎日毎日電車やタクシーに乗ってまでそんなレストランに出かけるなんて、と思ったのかもしれない。
実際は列車に乗り遅れて予約していたレストランに行けなかったり、行っても頼んだものは二人でシェアして食べて大した支払いにならなかったりしたんだけど。

本当はミシュランの二つ星で、しかもイタリアのグルメ雑誌ガンベロロッソで最高位にランクされているという、ガンベロロッソというレストランに行きたかったんだけど。日本から直接電話をしても、ホテルから頼んでもらっても、私たちが滞在している3日間は、ランチもディナーもぜーんぶ他の予約でいっぱいとの事で、キャンセル待ちも受け付けてもらえず、行くことができなかった。

そんなレストランに行かなくっても、海辺のリゾート地ビアレッジオとその周辺には、海岸沿いにいくらでもいいレストランが並んでいたんだけどね。特に夜になると、海岸通りはそぞろ歩く人で溢れ、オープンエアのレストランやカフェにはバンドが入ったりしてにぎやかで、みんな思い思いに楽しんでいる。そんな中の一つにひょいと入っても、十分満足できたはずだ。でもGのポリシーに従い、私たちは毎晩着物や浴衣を着てミシュランに載っているレストランに予約して出かけ、冷房が効いている室内で食事をした。

ビアレッジオは、砂浜にはレンタルのビーチパラソルとチェアが並ぶ海の家が、その後方にはホテルや貸し別荘が並ぶイタリアの典型的なビーチリゾートだ。
海の家とホテル街の間は長いプロムナードになっていて、カフェやレストラン、ブティックが並んでいる。朝はここに朝市が立ったり、夜はバンドや大道芸人が出たりする。昼は少なめに、夜はぎっしりと、避暑に来た人たちがいつもここをそぞろ歩いている。
こんなプロムナードが海岸沿いに延々と3kmも続くのだ。ちょっと行けば隣の街で、そこも似たような構成だ。隣の町のフォルテ・デイ・マルミはビアレッジオの人に言わせれば、ミラノやアメリカ、ロシアから金持ちがやって来て何もかも高い所、なんだそうだけど。
確かにフォルテ・デイ・マルミのレストランロレンツオは、ビアレッジオの老人が集ったり子供がギャーギャー言ったりしている庶民的なレストランと違って、レストランの内装は豪華で、スタッフはみな慇懃無礼な雰囲気だったな。お料理はとっても美味しかったけど、値段もけっこうなものだった。

イタリアの避暑シーズンのピークは6月-7月で、その時は夜10時くらいまで外は明るいらしい。私たちが行った8月半ばも昼間は30度以上になり、日暮れは夜8時と、日本から行った私たちにすれば十分夏モードだったけれども。
日なたは暑いけれども日陰に入って風に当たれば涼しくって、夜は海からの風がさらに気持ちいい。だからイタリア人たちは昼間はビーチで寝ていて、日が暮れる頃からやっと活動開始、という感じになるのだ。だから夜中の12時でもプロムナードは人でぎっしりで、小さな子供たちもちゃんと起きている。海岸で子供たちが夜中の12時過ぎにサッ カーをやっているのを見たのはさすがにびっくりしたけれど。
昼間に出かけるときは、ホテル街の後ろの、海岸に平行に続いている細長い公園の中を、自転車で走るのが気持ちよかった。
公園は松やポプラの木が茂って林のようになっていて、ずうっと日陰が続いている。日なたはカンカン照りのときもここは気持ちよく風が吹いていて、強い日差しを浴びることも無い。こちらもたくさんの人が散歩したり自転車で通ったりしていて、道の両側には屋台も出ている。ここで一袋10ユーロでポルチーニを買ったんだけど、大きくて香りが強くて、ホテルの部屋でぷんぷんと匂った。

イタリア人たちは、海辺や、林の中や、レストランやバーで、ゆっくりと豪快に気持ちよさそうに過ごしているように見えた。海辺にたくさん並んでいるレストランはどこも魚介のメニューが多くて、頼むと大皿に山盛りになった魚介類のフライやグリルが出てくる。イワシ、イカの耳やゲソ、小さなタコ、そして大小さまざまのエビ。みんなそれをモリモリと食べている。あんなにたくさん、魚介類ばっかり食べて、飽きないのかしら?と日本人の私が心配になっちゃうくらいだ。




Gのレストラン評 ロマーノ(★)
ヴイアレッジオ最初のディナーに行く。ひどく混雑していて、子供連れが多くてファミレスみたいだし、サービスの人たちもせかせか動き回って、星がついているとは思えない雰囲気だ。プロセッコが振舞われ、これをちびちびやりながら注文を考える。

アミューズは「イトヨリダイのソテー(厨房にいる日本人が教えてくれた)」。前菜は「エビとズッキーニの花のフライ」と「手長エビとインゲン、トマトソース」。パスタは「イカ・タコ・エビのタリアテッレ・ネロ(イカ墨を練りこんだ手打ちパスタ)」。メインは「仔羊のTボーンステーキ」。海沿いの町のレストランだからメニューはシーフードが多く、頼んだ料理はどれもそこそこ美味しかった、敢えて注文した仔羊も空揚げみたいな調理が施されていて感心した。

ワインはキャンティ・クラシコ・レゼルバCastello di Amaの何と1986年もの(52ユーロ)。これは当たりだった。最初は強さばかり感じたが、グラスを揺らして空気を混ぜると味が丸みを帯びる。デキャンタして時間がたつうち次第にまろやかになり味わい深くなった。


Gのレストラン評 ミラージュ(スプーン2)
この日は電車で1時間南に下り、海辺の街チェチナCecinaにあるScacciapensieri(★)で海を眺めながらランチを楽しむというゴージャスな企画を立てていた。
しかし、ちょっとしたアクシデントがあって予定の電車に乗り遅れた。田舎の路線なので次の電車だとCecinaに着くのが2時間遅れる。タクシーで行くとレストランに払う値段より高くなってしまう。というわけで断念。食い散らかしに関しては綿密に計画して着実に実行するのが身上なのに、不覚としか言いようがない。
ヴィアレッジオにもよいレストランは多い筈だと気を取り直す。ミラージュ(ミシュランでスプーン2)でランチ。意外に空いていて、客は老人ばかり。サービスの男性も60歳はとうに越えていると思われる。

前菜はアンティパスト・ディ・カーサ(巨大な茹でたタコの足、極小イカと麦?のソテー、小エビと玉葱のソテー、イワシのマリネ、貝類のカルパッチョ)。プリモはムール貝とアサリのスパゲティ。セコンドは魚介のフリット盛り合わせ。これまでもシチリアやイスキアなどで食べてきた素朴なイタリアン・シーフード料理(ただスパゲティが塩辛すぎた)。地元産のシャルドネ(Fattoria Collefiorito 2006)をごくごく飲む。食事が終わると、有無を言わさず巨大なタルトとリキュールがどんと置かれる。僕が「これグラッパかな?」かなんか独り言を言うと、おじさんがグラッパのボトルを10本くらいどどっと出してくる。高級店とはまた違う大味でフレンドリーなサービスが心地よかった。



Gのレストラン評 イル・ポルト(スプーン2)
ディナーに港のそばのイル・ポルト(ここもスプーン2)に行く。2階建ての広い店がほぼ満員になるほど繁盛している。予約のない客は次々に断られている。忙しい割に人が足りておらず、スタフ数名が走り回ってサービスしている。昨夜のロマーノと言い、8月の海辺のリゾートは仕方ないのかもしれないが、稼ぎ時なのだし臨時雇いでスタッフを増やしてはどうか。夏休みだし学生を使うとか。

前菜はアンティパスト・ディ・カーサ(極小エビのフリット、タコ、魚のすり身のフリット、白身魚のカレー、ガンベリのすり身のフリット、小イカの頭にゲソを詰めたものラグー添え)。プリモを2皿(リガトーニトマトソース魚介ソース、スパゲティ・ボンゴレ)。お腹がすいていないのでメインはなし。ワインはCharmantという名のスプマンテにする。前菜もパスタも昼の店より味がよい。ずいぶん待たされた点を除いて満足。
11時を過ぎて店を出て、ホテルまで2km近い道のりをブラブラ歩いて帰る。海辺のプロムナードにはショップやカフェが並び、所々でバンドが演奏し、数え切れないバカンス客で溢れかえっている。この人たちはいったい何時まで遊んでいるのだろうか?


Gのレストラン評 ダ・ジョルジオ(スプーン1つ)
入り口に仕入れてきたイワシだのスカンピだのイカだのが雑然と置かれ、壁一面にあまり統一感のない様々な絵画や写真が飾られ、客席は満員、蝶ネクタイのサービスの男性が3人。これこそ地元のトラットリアという感じ。

夜に備えて注文は控えめに。手長エビ・レモン・リコッタチーズのタリオリーニ、魚介のグリル盛り合わせ(舌ビラメ、シャコ<イタリア語でCannocchieという>、手長エビ、車エビ、小さめのイカ、小さいタコ)、ほうれん草のソテー。ワインは地元産の白、Montecarloの2006年。
料理はシンプルだが結構うまい。他の客が豪快に飲んだり食べたりしているのを見ているだけでも気分がよい。旅行先でふらっと入るには最高の雰囲気だ。ヴィアレッジオ4軒目で格はいちばん低いが、いちばん気に入った。


Gのレストラン評 ロレンツォ(★)
ディナーに、予め予約していたタクシーで30分ほどのフォルテ・デ・マルミという街のロレンツォ(★)に行く。この街もヴィアレッジオ同様海沿いのリゾートだが、同じ星ひとつでもヴィアレッジオのロマーノよりも内装も店員も客も高級感が漂う気がする。後で聞くとここフォルテ・デ・マルミはイタリア北部やアメリカやロシアからお金持ちが集まる高級リゾートなのだそうだ。

どれくらい食べられるか迷ったが、シーフードづくしのお任せコース(100ユーロ)にする。ワインはトスカンの赤とだけ指定してソムリエに推薦してもらい、Giusto di Notriというリボルノ産のいわゆるスーパートスカーナを飲む。2002年だとまだ若いのかもしれないが、これがなんともうまい(魚より肉向きの味ではあるが)。
料理は前菜が「魚のクリームコロッケと小エビのフライ」「ゆでた小イカ」「ゆでたエビのトマトソース」「魚介と白インゲン豆と麦のスープ」。4品とも火加減が絶妙で味も繊細で日本人にとってもすごく美味く感じられる。

プリモが「手長エビとイカのスパゲティ(Bavette)」で、この店のスペシャルテだという。エビもイカもまたしても火加減がちょうどよく、細めのスパゲティと食感の組み合わせがなんとも言えない出来栄えである。セコンドが「ブランジーノのオーブン焼」で、これはまあ普通といえば普通かな。

料理はビアレッジオのどの店に比べても別格と言っていい水準。ただし、1日に2回も豪華な食事をするのはやはり無理があって、残念ながら前菜が終わる頃にはお腹いっぱいで苦しかったというのが正直なところ。ランチをもう少し軽くしておけばよかったかなあ。(以上、Gのレストラン評)


私たちはほんの3日しかこのヴィアレッジオには居なかったけど、イタリア人やほかの避暑客たちは1ヶ月近くもここに滞在する。子供の頃からずうっと、毎年毎夏、毎日毎日、昼間はビーチで昼寝、日が暮れるころにやっと起き出して、海岸沿いの商店街をそぞろ歩き、という生活をしているんだろうなあ。
そんな中に紛れ込んで、いいなあ、うらやましいなあなどといっている私たちであった。 国際観光都市のフィレンツェやコッレ・ディ・ヴァル・デルサならともかく、こんなイタリアのひなびた海辺の町に来て、きょろきょろ見回しながらなんか言ってる日本人二人組みなんて、かなり変な構図だったと思う。

1.フィレンツェのお得ホテル
2.美術館や、2階建て観光バスや、テルメなど
3.フィレンツェ及び近郊のレストラン
4.コッレ・ディ・ヴァル・デルサ
5.Toscanaの伊豆、ビアレッジオ


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