2013年5月13日 持田直武
米露両国がシリア問題に関する国際会議を開催することで合意した。シリア政府と反政府派双方の代表を招いて停戦と移行政府の樹立を協議する。シリア内戦はサリン使用の疑惑やイスラエルのシリア空爆などで情勢は悪化の一途、米国内には軍事介入を主張する強硬論が強まった。だが、オバマ大統領はロシアの協力を得て国際会議開催を選択した。 ・米露がアサド退陣問題で妥協か
国際会議は5月7日米側の呼び掛けで開催が決まった。ケリー国務長官が7日モスクワを訪問し、ラブロフ外相と3時間会談、そのあとプーチン大統領とも2時間会談した。ロイター通信によれば、プーチン大統領はこの会談にあたってケリー国務長官を3時間待たせたという。ロシアが米の提案を慎重に検討したことを示している。米国とロシアはシリア内戦でいわば敵対関係にある。ロシアはシリア政府を支援し、米国は反政府勢力を支援しているからだ。その両国が国際会議の開催で合意した意義は大きい。 ・オバマ大統領は米軍派遣に否定的な姿勢
オバマ大統領はアサド大統領の処遇のほか、もう一つシリア問題で妥協したとみられることがある。米軍部隊のシリア派遣に否定的になったことだ。同大統領が5月3日訪問先のコスタリカで記者会見したが、この席で報道陣の1人が「シリアへの米軍派遣を選択肢から除外するのか」と質問した。ホワイトハウスが公開したトランスクリプトによれば、オバマ大統領は即答を避け、会見の最後になって次のように答えた。「私は大統領であると同時に米軍総司令官である。その立場からすればあらゆる選択肢を除外しないのが一般的だ。状況が変化した場合に備えなければならないからだ。しかし、現在予見できる限りでは、米軍の派遣が米国にとって良いだけでなく、シリアにも良いというシナリオを描くことができない。私が会ったシリア周辺諸国の首脳たちもこの認識は同じだった」と答えた。 ・国際会議開催は5月中の予定
内戦でサリンの使用が確実となったあと、米はじめ西側諸国では軍事面の介入を主張する動きが強まった。イスラエルがシリアの軍事施設を空爆したこともこの動きを加速した。シリアが反撃すれば、戦火が国境を越えることが確実となったためだ。だが、オバマ大統領は軍事面の介入には消極的だった。同大統領はこれまでシリア反政府派に人道援助をしたが、武器など軍事面の支援はしなかった。武器を補給すれば、過激派に渡るという懸念が消えなかったためだ。反政府勢力が一時の力を失い、戦闘能力があるのは過激派だけとの見方も強まっていた。この段階での武器補給は過激派を強化するだけというのだ。こんな中、オバマ大統領が選択したのはロシアと協力して国際会議を開催することだった。場所はまだ決まっていないが、オバマ政権は5月中に開催する予定で準備をしている。 掲載、引用の場合はこちらからご連絡下さい。 持田直武 国際ニュース分析・メインページへ |
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