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2019年1月 河内丸から飛鳥Ⅱ:ファミリーヒストリーをたどる旅

1. 船乗りだったおじいちゃん-乗っていたのは日本郵船の船2. 喧嘩してもクルーズ-飛鳥ii

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喧嘩してもクルーズ-飛鳥Ⅱ

今まで30回くらい船に乗ったけれど、母と船に乗るのはこれが初めてだった。乗船したのは、2019年1月24日横浜発着の「新春の伊勢クルーズ」。横浜を出て翌朝四日市港に入港。夕方出港してまた横浜に戻るという二泊三日のクルーズだ。

私には破格の短さだったけれど、手がかかる母やおばと一緒に乗るには、これぐらいがちょうど良かった。週末のクルーズだったので、小さな子供連れの若夫婦など、お客さんの年齢も様々だった

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馬には人参、私には船

旅程

時は経って2019年の1月、船乗りだったおじいちゃんの娘である母が、どうしても飛鳥に乗りたいから、予約をしてちょうだいと言い出した。しかも行きたいのは10日後に出発のクルーズだ。担当のお医者先生の許可ももらったと言う。

そんな直前のクルーズ無理でしょ。しぶしぶ問い合わせをしたら、スイートが取れてしまった。定員3人のいいお部屋だ。

取れたはいいけれども、じゃあ誰と行くの? 母のいつもの旅の友達は、急すぎて都合がつかない。

私は20代の頃に母と旅行をして以来、絶対に母とは旅行に行かないと決めていた。 パリの街中で大喧嘩をして、右と左に別れるなんてしょっちゅうだった。同じホテルの部屋に戻らねばならず、悔し涙にくれたものだ。

でもこれは船旅だから。。。そしてスイートだから。。。仕方なく私が行くことにした。おばも一緒に来てくれると言う。わがまま放題の母と私がよくケンカするのを知っている、私の味方だ。

勢い余ってどちらかが海に飛び込んだり、どちらかを海に投げ込んだりしないようにと。

わがまま嘘つきし放題

お部屋

やっと確保したひと部屋というのに、母の文句は止まらない。もう一つ上のスイートなら、スイートレストランに行けるのに。もう一つ下のバルコニーなら、もっと安いのに。

そう。取れたスタンダードスイートには、特典があまりない。せいぜい少し早く乗船できて、部屋の冷蔵庫のビールとジュースが飲み放題になるぐらいだ。

お部屋は33.5平米と、バルコニーの23平米よりは広いけれど、お値段は部屋の広さの差よりも高い。季節外れのたった二泊のクルーズが、3人で50万円だ。ひえー。

高いのを無理してやっと取ったと言うと、割引券があったのにと母は言う。言うのが遅いんだってば。

そんなこんなでムカつきながらも、いよいよ明後日から船に乗るという日、母を診ているお医者様から電話がかかってきた。

「旅行で、船に乗るんですか?」と驚いている。先生も許可していると聞いたから取ったのに、私も驚いた。

「予約が取れて良かったですねと先生が言ってくれたと、母から聞きましたが。。。」

「そんなこと言ってませんよ! 行くって今日聞いたのですから。」 いつもは紳士的で優しい先生の声が裏返っていた。また母にしてやられてしまった。

大名行列でスイートルームへ

景色

さていよいよ出発の日。おばの娘(つまり私のいとこ)が車を出してくれて、杉並の病院で母の薬を受け取り、横浜の大桟橋まで四人でドライブ。

途中、私のおばあちゃん、母やおばの母が先生をしていた美容学校があった欅坂を通り、横浜大空襲の時、右に行った母のいとこたちは生き残り、左に行った祖父の妹一家は焼け死んでしまった大通りを渡る。そして、懐かしの横浜グランドホテルで、みんなで名物のカレーを食べた。

その後、子供の頃よく遊びに来た氷川丸の前を通って、大さん橋に到着。チェックインカウンターで、私がこっそり頼んでいた車椅子を受け取る。

母を座らせようとしたら、案の定ものすごく嫌がった。でも仕方がないでしょう? 中型といっても5万トンの船だ。先生も呆れる病状の母が、船の中を元気に歩き回れるわけがない。

ハンサムな男性クルーが車椅子を押してくれて、母も少しはおとなしくなった。その後におばと私が続き、エレベーターに最優先で乗って、長い廊下を進む。まるで大名行列のように、私たちはスタンダードスイートの客室に入った。

部屋+バルコニー

部屋は3人分のベッドでいっぱいの広さだったけれど、バスルームはジャグジー付きのバスタブとシャワーブースが別にあり、ビデまであって余裕の広さ。ビデがあるのは、この船が元々はクリスタル・ハーモニーというアメリカの船だったからか、1990年生まれと古いからか。

バスタブのジャグジーはとっても勢いが良くて、シャワージェルを入れすぎたら泡が爆発してしまった。

バルコニー

出港までは母を部屋で休ませ、避難訓練は私が声音を変えて「代返」。船が動き始めたらみんなでバルコニーに出て、迫ってくるベイブリッジを見上げ、見送る。 そして陸地の方に目を凝らす。

私が7歳まで育った磯子の杉田の団地は、埋め立てでずっと海岸線の奥になってしまい、船からはとうてい見えない。 結婚したばかりの父と母が抽選でそこを当てた頃は、海がすぐ側にあったと言うけれども。

おじいちゃんの親戚がたくさん住んでいる三浦に近づく頃には、すっかり日が暮れて何も見えなくなった。

ちゃんとお腹いっぱい。

お食事

さあ晩ご飯だ! 母に部屋のスパークリングワインのボトルを持たせ(嫌がったけれど)、私が車椅子を押して食堂に向かう。 ディナーは1泊目が洋食で2泊目が和食だ。

私の一番の心配は、量が少なすぎて、お腹がいっぱいにならないんじゃないかしら。。。ということだった。メインディッシュは二皿頼み、さらに母やおばが食べきれなかった分も食べて、お腹いっぱいになれた。ポーションも心配したほど少なくはなかった。

breakfast

母が喜んだのは、ルームサービスの朝食だった。これはスイートの特典だ。外国船ならどの部屋にも付くルームサービスだけれど、飛鳥では特別なのだ。部屋のテーブルを広げ、クロスをかけて、トレーに乗せた朝食がどんどん運び込まれる。

私のことだから、卵は5人前、ヨーグルトは6人前と、人数をはるかに超える数を頼んでいるのは言うまでもない。食欲がだいぶ落ちていた母もけっこう食べ、残りを私が片付ける。

船の朝ご飯ってなんて美味しいのかしら。ひと晩船のゆりかごで揺られて、血行が良くなるんだと思う。クルーズ船が初めてだったおばは、トイレに起きることなく、ぐっすり朝まで眠れた。こんなこと本当に久しぶり、と喜んでいた。

これが飛鳥流かな。

お風呂

四日市に停泊中は、母とおばは大浴場に行ってお風呂でのんびり。お風呂にはがっしりと手すりがついているし、介護施設にあるような吊り上げ機もあるので安心だ。

船から見える風景がいまいちだったけれど、たった2泊のクルーズだ。この辺まで来るのがせいぜいだと思えば仕方がない。

風景

正直言って閉口したのはサービスだ。食事の時は日本の居酒屋式に「すいませーーーん」と大声で呼ばないとウェイターが来てくれない。外国船なら目配せしたりちょっと片手をあげるだけで、気づいてくれるのに。。。

出かける時にお部屋の掃除中だったので「着替えたいので後にしてください」と言ったら「私の勤務時間はあと10分で終わりなんです」と言われたのにも驚いた。

ショーのシンガーやダンサーはとっても上手なのに、パフォーマンスはお遊戯みたい。なんで「七つの子」を BGM に、カラスの着ぐるみを着て羽をパタパタさせるのか。。。

映画音楽がテーマの時は、実際の映画を後ろのスクリーンに映している前で、全く同じかもうちょっと簡単な振りで飛鳥のダンサーが踊る。狭い舞台で踊ったって、映画のフレッド・アステアやアイリーン・キャラに勝てるわけないじゃん。

そんなこんなに文句を言ったり笑ったり。おかげさまで喧嘩せずにクルーズすることができた。

なにー、もう一度!?

景色

これが最初で最後と取ったクルーズだったけれど、戻ってすぐに母はまた行きたいと言い出した。せっかく大フンパツしたのに、何が不満だったというの!? 

むっとして知らんぷりをしていたら、母は自分で日本郵船に電話をかけてクルーズを予約していた。今度は東北に行く、3泊のコースだ。

でもその思いは叶わなかった。キャンセル待ちだったので。そして母はそのクルーズの出発の3日前に亡くなったので。骨髄腫という特殊な癌で、前の年の秋に余命6ヶ月の宣告を受けていた。

亡くなる15日前までローストビーフを食べに外出し、その後牛タン弁当やフォアグラや、病室のテレビで見た一切れ3200円のメロンケーキを食べたいから買ってきてと大騒ぎ。

食いしん坊は私も同じなので、なんとか望みを叶えたいとは思うけれど、あっちこっちに指定のものを買いに行くのにヘトヘトになった。

一週間前にほぼ意識をなくしてからは、 YouTube で港の音を流してクルーズ気分を演出。今頃は天国で船に乗って、ステーキでも食べているであろう肉系の母であった。

港の音はこちら。いい感じです。

  • おしまい。次は「19年GW ノルウェージャン・ブリスで天国気分 」へ
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私が通訳します。日本語で問合せできるアメリカのクルーズ代理店はこちら↓

このサイトの作者:しの

翻訳系リサーチャー。夫のGはへろへろサラリーマン。 たまにしか行かれないクルーズ旅行も、30回を越えました。 このサイトについて

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